カモノハシ

複数の本を並行して読むことが多い。そうするきっかけは、成毛眞『本は10冊同時に読め!』の影響であったかどうかは、もう記憶にない。

 

読み終わった、三中信宏『読書とは何か』にて、

ウンベルト・エーコ記号論書『カントとカモノハシ』(エーコ 2003)の主役はオーストラリアの川に生息するカモノハシという奇妙な動物だ。エーコはこう書いている。

 

 カモノハシは、あらゆる分類の試み―科学的であれ通俗的であれ―に挑戦するために生まれてきたような不思議な動物だ。(エーコ 2003,上巻,p.88)

 

くちばしがあって前足には水かきがあり卵で生まれるのに幼獣は母乳で育つという尋常ではない生き物であったとしても、カモノハシは確かに地球上に実在する。にもかかわらず、そのカモノハシを分類することは長らく困難だった。分類に用いられる特徴の選び方によって、カモノハシは「鳥」だったり「哺乳類」だったり分け方がころころ変わってしまうからだ。(三中 2022,154-155)

 

とあり、結局カモノハシは鳥なのか哺乳類なのかと迷ったが、ちょうど同日に読み終えた川上和人『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』の文庫版にて、カモノハシが(本文ではなく)注釈で説明されていたことを思い出す。

 

カモノハシ

オーストラリアにすむ哺乳類。哺乳類ではあるが、卵を産む、くちばしがあるなどかなり変わっている。水辺にくらし、小動物を食べる。(川上 2018(2013),255)

 

哺乳類であることを確認でき、尋常でない変わった生き物であることを確認する(というより、カモノハシという奇妙な「動物」とある時点で哺乳類だと気づけばよかった)。

 

思い返すと、カモノハシが哺乳類であることは『小学館の図鑑NEO 動物』で最近見たのだった。そのおかげなのか、同日に読み終わった2冊の本が「カモノハシ」で結びついた。紐帯の弱さよ。的外れな結びつきのため、早々に忘れてしまうおそれがあるのでとりあえず記録。

 

さらに思い返し、本棚から久しぶりに取り出した三中信宏『分類思考の世界』にて

「カモノハシ問題」の責任を、カモノハシのせいにしてはいけない。(三中 2009,p49)

の箇所に波線を引いてあったことに気づく。『分類思考の世界』46-49ページにて、より充実したカモノハシ情報を得る。